【抜歯回避の最終手段】歯根端切除術とは?成功率を高める治療法、メリット・デメリットについて
2026/01/10
「もう抜くしかない」と諦める前に。根の先端の病巣を直接治す手術の可能性
東京都江戸川区小岩で根管治療専門外来を開設しております、笠原デンタルオフィスです。
根管治療(歯の神経の治療)は、歯の内部の細菌を清掃し、密閉する治療です。
しかし、どれだけ精密に根管内を清掃しても、
「どうしても治らない」
「治療後も膿や腫れが再発する」
という歯が、ごく稀に存在します。
このような場合、一般的には「抜歯」が推奨されますが、抜歯回避のための最終手段として、「歯根端切除術(しこんたんせつじょじゅつ)」という外科的治療も選択肢として検討可能です。
歯根端切除術とは、歯の根の先端にある病巣(膿の袋)を、歯茎を切開して直接除去し、同時に根の先端を数ミリ切断して、その切り口を特殊な薬剤で密閉する非常に高度な手術です。
この記事では、この「歯根端切除術」について、以下の点を分かりやすく解説します。
なぜ歯根端切除術が必要になるのか?(通常の治療の限界)。
成功率を飛躍的に高める当院の精密な治療方法。
メリット、デメリット、そして手術後の注意点。
歯根端切除術が必要になるとき(適応症)
なぜ通常の根管治療では治癒せず、外科的にアプローチする必要があるのでしょうか。
それは、病気の原因が「根管の内部」だけでなく、「根管の外側」にあるケースがあるからです。
歯根端切除術が必要になる主な三つのケース
歯根端切除術(外科的根管治療)の適応となるのは、主に以下のような状況です。
根管外感染(根の周囲の慢性的な炎症)
根の先端の骨の中に、細菌が硬い膜(バイオフィルム)を形成してしまっている場合や、抗生物質や消毒薬が効きにくい特殊な細菌が原因となっている場合。
この場合は、根管内からの消毒薬では、根の外部にあるこれらの感染源に十分に作用しません。
外科的に病巣全体を直接切除するしか、治癒させる方法がないと判断されます。
物理的な障害物による感染源の封鎖
過去の治療で挿入した金属製の土台(ポスト・コア)が強固に固着しており、除去しようとすると歯の根が割れてしまうリスクが高い場合や、根管内に折れた器具(ファイル)が詰まっており、その破折片が感染源を封鎖してしまい、根管の先端まで清掃・密閉できない場合。 これらの障害物を無理に取り除こうとするよりも、根の先端を切り取り、そこから逆方向に清掃・密閉する方が、歯の構造を安全に保てます。
根尖の解剖学的構造の問題
歯の根の先端が極端に曲がっている、あるいは複雑な枝分かれ(デルタ)をしている場合、根管治療の器具や薬剤が先端まで届かず、未清掃のままの部位に細菌が残り続けている場合
適用できない場合(禁忌症):無理に残すことができない歯
歯根端切除術は、万能ではありません。
以下のような場合は、残念ながら抜歯を推奨せざるを得ません。
歯の根の完全な縦破折
歯の根が完全に割れている場合。割れ目から細菌が絶えず侵入するため、切除しても治癒は見込めません。
重度の歯周病
歯を支える骨が半分以上溶けており、歯が大きくグラついている場合。
手術で根の先端をさらに短くすると、歯を支える力がなくなり、機能不全に陥ります。
解剖学的リスク
手術部位のすぐ近くに、下顎管(太い神経と血管)や上顎洞(鼻の空洞)があり、手術を行うことで大きな合併症のリスクがある場合。
歯根端切除術の成功率とメリット・デメリット
歯根端切除術は外科手術ですが、マイクロスコープを用いた精密な術式を選択することで、従来の治療と比較して高い成功率が期待できます。
飛躍的な成功率の向上
術式 |
成功率(一般的な統計) |
従来の歯根端切除術(肉眼) |
40%〜60%程度 |
精密歯根端切除術(マイクロスコープ使用) |
80%〜95%程度 |
従来の術式で成功率が低かったのは、肉眼では根の先端の複雑な形状や、逆根管充填の密閉性を確認できなかったためです。
マイクロスコープを用いることで、感染源の取り残しと密閉の不確実性という二大失敗要因を排除できるため、成功率が飛躍的に向上します。
歯根端切除術のメリット
大切な天然歯を残せる(抜歯回避):これが最大のメリットです。
抜歯した場合、インプラントや入れ歯などの人工的な補綴物が必要になりますが、ご自身の歯を残せます。
被せ物を外さずに済む
通常の根管の再治療では、すでに装着されている高価な被せ物(クラウン)や、土台(コア)を一度壊して外す必要がありますが、歯根端切除術は外科的に根の先端にアプローチするため、被せ物をそのまま残せます。
治療回数が比較的少ない
手術自体は通常1回で完了します(術前の診断と術後の経過観察は必要)。
根管の再治療を何度も繰り返す精神的負担から解放されます。
歯根端切除術のデメリットとリスク
外科手術であること
切開や縫合を伴うため、手術後に腫れや痛み、内出血(あざ)が生じることがあります(通常数日で治まります)。
歯の根が短くなること
根の先端を数ミリ切除するため、歯の根がわずかに短くなります。これにより、歯を支える力がわずかに弱くなる可能性があります。
再発のリスクがゼロではない
どれだけ精密に行っても、稀に細菌が再増殖し、病変が再発する可能性はゼロではありません。
再発した場合、通常は抜歯が推奨されます。
すべての歯に適応できるわけではない
前述の通り、歯周病が進行している歯や、親知らずなどの特殊な位置にある歯には適用できません。
成功率を飛躍的に高める精密な治療方法
歯根端切除術の成功率は、従来の肉眼での手術と、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密な手術とでは、大きく異なります。
当院では、マイクロスコープを必須とした専門的な術式で、成功率の最大化を図ります。
従来の術式との決定的な違い
特徴 |
従来の歯根端切除術(肉眼) |
精密歯根端切除術(マイクロスコープ) |
病巣の除去 |
肉眼で確認できる範囲での切除。感染源の取り残しリスクあり。 |
最大20倍の拡大視野で、病巣組織、未確認の側枝、亀裂を明確に確認しながら除去。 |
根の切除 |
角度や深さが不確実になりやすい。 |
超音波機器を使用し、根の形態を崩さず、精密かつ最小限の切除(1〜3mm)を行う。 |
密閉処置(逆根管充填) |
肉眼での作業のため、密閉材(セメント)が隙間なく充填されにくい。 |
拡大視野下で、特殊なMTAセメントを根の切断面に隙間なく精密に充填。これが成功の鍵。 |
歯の損傷 |
術野が不明瞭なため、健康な骨や歯を過度に削るリスクがある。 |
最小限の侵襲で、病巣のみをターゲットにするため、治癒が早い。 |
手術の具体的なステップ(当院の精密術式)
- 麻酔と切開
手術部位に局所麻酔を確実に行い、歯茎をわずかに切開・剥離し、根の先端の骨を露出させます。 - 病巣の除去
マイクロスコープで患部を拡大しながら、根の先端の骨にできた病巣(膿の袋)を、周囲の健康な骨を傷つけないよう、丁寧かつ完全に掻き出します。 - 根尖の切除
根の先端(通常1〜3mm程度)を、マイクロスコープで確認しながら、特殊な超音波チップを用いて水平に精密に切断します。これにより、未清掃だった根管の先端部を物理的に除去します。 - 逆根管の形成と消毒
切断した根の断面に、マイクロスコープを見ながら小さな穴(逆根管)を形成し、残存する細菌がいないかを徹底的に確認・消毒します。 - 逆根管充填(最も重要なステップ)
形成した逆根管に、MTAセメントという生体親和性が高く、封鎖性に優れた特殊な薬剤を、マイクロスコープの拡大視野下で、隙間なく、完璧に充填します。
この完璧な密閉こそが、再発を防ぐ決定的な要素です。 - 縫合
切開した歯茎を元の位置に戻し、縫合して手術を完了します。
手術後の注意点と専門医からのメッセージ
歯根端切除術の成功には、術者の技術だけでなく、患者様による手術後の適切なケアが不可欠です。
手術直後の重要な注意点
止血
手術直後は、ガーゼを強く噛んで圧迫止血してください。
唾液に少量の血が混じるのは正常ですが、血が止まらない場合は速やかにご連絡ください。
腫れ・痛み
術後2~3日が腫れのピークです。痛み止めや抗生物質は、指示された通りに服用してください。
患部を冷たいタオルなどで優しく冷やすことは有効ですが、過度に冷やしすぎないでください。
安静
激しい運動、飲酒、長時間の入浴(シャワーは可)は、術後数日間は避けてください。
血行が良くなると、出血や腫れが悪化する可能性があります。
日常生活における注意点
食事
麻酔が切れるまでは食事を控えてください。
術後数日間は、熱いものや刺激物、硬いものを避け、反対側で噛むようにしてください。
歯磨き
手術部位はブラシが当たらないように注意し、他の部位は丁寧に磨いてください。
手術部位の清掃は、うがい薬の指示に従ってください。
抜糸
通常、術後1週間から10日程度で抜糸を行いますので、必ず指定された日時にご来院ください。
専門医からのメッセージ:諦める前に診断を
歯根端切除術は、歯科治療の中でも特に高度な知識と技術、そしてマイクロスコープという専門設備を必要とする治療です。
成功するかどうかは、術者の技術と逆根管充填の精密さにかかっています。
東京都江戸川区小岩にある笠原デンタルオフィスは、日本顕微鏡歯科学会認定指導医として、この精密な外科処置も得意としています。
「何度も根管治療を繰り返したが治らない」
「他院で抜歯しかないと言われた」
という難症例に対し、当院は歯科用CBCTによる正確な診断と、マイクロスコープを駆使した確実な外科処置で、大切な歯の温存に最大限の努力を払います。
ぜひ一度、当院にご相談ください。