「パーフォレーション(穿孔)」は根管治療の失敗!?原因と症状、対処法について
2025/12/10
根管治療で「穴が開く」って本当?「治療中のアクシデント」から歯を守り抜くために
東京都江戸川区小岩で根管治療専門外来を開設しております、笠原デンタルオフィスです。
根管治療は、歯の内部に複雑に張り巡らされた根管(神経の管)をきれいにする、非常に繊細で難しい治療です。
その治療の過程で、ごく稀に起こり得る合併症の一つに、「パーフォレーション(Perforation)」があります。
これは、治療中に使用する器具によって、歯の根っこや歯の底の部分に、意図せず穴が開いてしまう(穿孔)状態を指します。
この「穴が開く」という事態は、患者様にとって大きな不安やショックを与えるものです。
「これは治療のミスなのか?」「この歯はもう抜歯しかないのか?」と心配されるのは当然です。
結論から申し上げますと、パーフォレーションは、治療の難易度や根管の特殊な形状、過去の治療の影響など、多くの要因で発生し得るリスクです。
しかし、パーフォレーションが発生しても、適切なタイミングで、専門性の高い精密な処置を行えば、多くの場合、大切な歯を残すことが可能です。
この記事では、このパーフォレーションについて、以下の点について分かりやすく解説します。
パーフォレーションが起こる具体的な原因と、患者様が自覚する症状。
パーフォレーションが歯の寿命に与える深刻な影響。
パーフォレーションを修復し、歯を残すための当院が行う精密な対処法。
「パーフォレーション」という予期せぬアクシデントに直面しても、決して諦めないでください。
精密歯科医療の専門家として、患者様の不安を解消し、大切な歯を守るための最善策をお伝えします。
パーフォレーション(穿孔)とは?そのメカニズムと影響
パーフォレーションがなぜ起こるのか、そしてなぜそれが歯の寿命に大きく関わるのかを理解しましょう。
パーフォレーションが発生するメカニズム
パーフォレーションは、主に以下の二つの段階で発生します。
根管口の探索時
根管治療の際、歯の表面から根管の入り口(根管口)を探す過程で、根管が非常に細かったり、途中で大きく曲がっていたり、以前の治療で詰めた金属(コア)などが残っていたりすると、器具が誤って根管ではない方向に進み、歯の側面に穴が開いてしまうことがあります。
複雑な根管の清掃時
特に、歯の根が二股に分かれる部分(分岐部)や、根管が異常に薄くなっている部分で、感染した壁を薄く削りすぎた結果、穴が開いてしまうことがあります。
また、以前の根管治療でポスト(土台)を入れるために深く削りすぎた部分が、再治療の際に穿孔することもあります。
パーフォレーションの発生は、歯科医師の技術や注意力だけでなく、患者様の歯が持つ複雑な解剖学的構造(根管の曲がりや細さ)や、過去の治療の痕跡など、複数の要因が絡み合って起こる、一種の医療上の偶発症でもあります。
パーフォレーションが歯の寿命に与える深刻な影響
パーフォレーションが発生すると、その「穴」を通じて、歯の内部と外部(歯周組織や骨)が直接繋がってしまいます。
この状態を放置すると、以下のような深刻な問題が発生し、歯の寿命が著しく短くなります。
細菌の侵入と感染の拡大
穴が開いた部分から、口腔内の細菌が直接、歯の周囲の骨や歯茎に侵入し、根管内の感染とは別の新たな感染巣(病巣)を作ります。
特に、唾液が侵入することで感染は急速に進行します。
炎症と骨の吸収
穴の周囲で慢性的な炎症が起こり、歯を支える歯槽骨(しそうこつ)が溶け出します。
これにより歯がグラつき始め、歯周病のような状態に陥りやすくなります。
穿孔部位の出血と治癒の妨げ
パーフォレーションが起こると出血が生じ、その後の根管治療の視野を妨げます。
また、血が固まることで、根管内に正確な薬剤を詰める作業の妨げにもなり、治癒を困難にします。
パーフォレーションの症状と、患者様が気づく可能性のあるサイン
パーフォレーションが発生した際、患者様が必ずしも自覚症状を感じるわけではありませんが、治療中や治療後に以下のようなサインが現れることがあります。
治療中に起こり得るサイン
パーフォレーションの多くは、治療中に歯科医師によって発見されますが、患者様も以下のような変化で違和感を覚えることがあります。
予期せぬ出血
根管内を清掃している際、急に大量の出血が起こり、止まりにくくなることがあります。
根管治療は、神経が死んでいる歯が多いため、本来は出血が少ない治療です。
急な強い痛み
通常、麻酔が効いているため痛みを感じにくいですが、穿孔によって歯周組織に直接器具が触れたり、消毒液が流れ込んだりすることで、瞬間的に強い痛みを感じることがあります。
治療後に起こり得る症状
パーフォレーションが発生したにも関わらず、すぐに修復されなかった場合や、修復が不完全だった場合、数週間から数ヶ月後に以下のような症状が現れます。
歯茎の腫れ・排膿
穿孔した穴から細菌が骨に侵入し、歯茎の腫れや、膿の出口(サイナストラクト)を作ることがあります。
これは、根の先端の感染とは異なる場所から膿が出ているケースです。
咬合時の違和感や痛み
穿孔部位の周囲で炎症が起こり、その歯で物を噛んだ際に、歯が浮いたような違和感や、軽い痛みを感じることがあります。
持続的な不快感
穿孔部位からの慢性的な炎症が原因で、歯の周囲に重たい感じや鈍痛が続くことがあります。
これらの症状が根管治療後に現れた場合、根尖病変の再発だけでなく、パーフォレーションの発生やその修復の不完全さを疑う必要があります。
パーフォレーションの修復:歯の寿命を左右する精密治療
パーフォレーションは「穴が開いた」という状態であり、その穴を「いかに早く」「いかに精密に」塞ぐかが、歯を残せるかどうかの勝負になります。
当院では、この難易度の高い処置を成功させるために、以下の精密なアプローチを取ります。
診断の正確さ:パーフォレーションの位置と大きさを特定する
修復の第一歩は、穴の正確な情報を把握することです。
肉眼や通常のレントゲンだけでは、根管の影に隠れて穴の位置を正確に特定することはできません。
歯科用顕微鏡(マイクロスコープ)
マイクロスコープを常時使用し、治療部位を最大20倍まで拡大します。
これにより、髪の毛ほどの小さな穿孔部位を直接確認し、穴の正確な大きさ、形、そして感染の状態を把握します。
歯科用CBCT(3次元レントゲン)
通常のレントゲンでは判別できない、穿孔部位と周囲の骨との位置関係、感染の広がりを立体的に解析します。
これにより、修復材を詰める深さや方向を正確に計画できます。
修復材の選択:MTAセメントによる確実な封鎖
パーフォレーションの修復には、単なる詰め物ではなく、特殊な材料が使用されます。
当院では、穿孔部位の修復に、MTAセメントという特殊なセメントを使用します。
MTAセメントは、生体との親和性が非常に高く、高い封鎖性で穴を確実に塞ぐだけでなく、骨やセメント質の再生を促す作用も期待できます。
このMTAセメントをマイクロスコープの拡大視野下で、穿孔部位にピンポイントで、かつ隙間なく精密に充填することが、修復成功の鍵となります。
成功のための「無菌環境」と「専門技術」
パーフォレーション修復で最も重要なのは、「穴」を塞ぐ前に、穴の周囲に付着した細菌を完全に除去し、再感染を防ぐことです。
ラバーダム防湿の徹底
修復作業中、唾液中の細菌が穴を通して根管内や周囲の組織に侵入することを防ぐため、ラバーダム防湿を徹底します。
これは、修復の成功率を高めるための絶対条件です。
指導医による確実な処置
複雑な根管内での出血をコントロールし、特殊なMTAセメントを精密に操作して充填する処置は、非常に高度な技術と経験を要します。
日本顕微鏡歯科学会認定指導医としての専門的な技術が、この難症例の成功を支えます。
当院で行ったパーフォレーション(穿孔)の治療例
症例1:【分岐部パーフォレーション】左下が腫れた。他院では抜歯と言われた。
左下6番、分岐部パーフォレーション
急性化膿性根尖性歯周炎。
左下が腫れた。他院では抜歯と言われた。
紹介来院(紹介状持参)
症例2:【分岐部パーフォレーション】左上痛い。他院では抜歯と言われた。
左上6番、分岐部パーフォレーション
急性化膿性根尖性歯周炎。
左上が痛い。他院では抜歯と言われた。
紹介来院(紹介状持参)
予期せぬ事態にも、決して諦めないでください
パーフォレーション(穿孔)は、根管治療における大きな懸念事項であり、患者様に不安を与えるものです。
しかし、診断技術の進歩と、マイクロスコープを用いた精密な修復技術の確立により、以前は「抜歯」と診断されていたようなケースでも、歯を残すことが可能になっています。
東京都江戸川区小岩にある笠原デンタルオフィスは、日本顕微鏡歯科学会認定指導医として、パーフォレーションを含む難治性の根管治療に特化しています。
「根管治療中に穴が開いたと言われた」
「以前の治療でできた穴が原因で、歯茎が腫れ続けている」
など、不安を感じている方は、ぜひ当院にご相談ください。
私たちは、最新の設備と専門的な知識をもって、あなたの歯を救うための最善策を追求いたします。