治療が難しいと言われる「根分岐部病変」とは?原因を突き止め、保存を試みる歯科治療
2026/08/05
東京都江戸川区小岩で根管治療専門外来を開設しております、笠原デンタルオフィスです。
「奥歯の歯茎が何度も腫れて、噛むと鈍い痛みがする」
「歯医者で『奥歯の根っこの股の部分(分岐部)が悪くなっている』と言われたけれど、どういう意味?」
奥歯のトラブルで精密検査を行った際、歯科医師から指摘されることが多いのが「根分岐部病変(こんぶんきぶびょうへん)」です。
前歯とは異なり、奥歯には根っこが2本、3本と分かれている「股」の部分が存在します。
この複雑に入り組んだ隙間に細菌が入り込んでしまうと、通常のブラッシングでは汚れを落とすことができず、治療の難易度も一気に跳ね上がります。最悪の場合、抜歯の原因の多くを占める非常に厄介な病態です。
今回は、根分岐部病変が起きる原因、進行度別の症状、原因別の具体的な治療アプローチ、そして当院が実際に取り組んだ難症例(パーフォレーション対応)について詳しく解説します。
根分岐部病変(こんぶんきぶびょうへん)とは?
前歯の根っこは基本的に1本ですが、強い力がかかる奥歯(大臼歯)は、2本〜3本の根っこに分かれて建物の柱のようにしっかりと顎の骨に根を張っています。
この根っこが二股、三股に分かれている分岐点(またぐらの部分)を「根分岐部」と呼びます。
ここに細菌感染が起こり、周囲の骨(歯槽骨)が溶けてしまう病態を「根分岐部病変」といいます。
なぜ治療が難しいのか?
根の股の部分は、外からは歯茎に隠れて見えません。
さらに、ドームの天井のようになり組んだ複雑な3次元構造をしています。
一度ここに細菌が入り込んで病変を作ると、ご自身の歯ブラシの毛先が届かないばかりか、歯科医師が使う一般的な器具もアプローチしづらいため、治療のやり直しや抜歯のリスクが高くなる箇所として知られています。
根分岐部病変の進行度(Glickmanの分類)
臨床では、根分岐部病変の進行度を測る指標として「Glickman(グリックマン)の分類」が広く用いられています。
1度(初期)
根の股の入り口部分の骨がわずかに溶け始めている状態。
器具(プローブ)を当てると少し引っかかりますが、まだ貫通はしていません。
2度(中等度)
根の股の奥に向かって骨が溶けている状態。
器具が内部に深く入っていきますが、反対側まで完全に突き抜けてはいません。
3度(重度)
根の股の骨が完全に溶けて消失し、東側の入り口から西側の出口まで、器具が抵抗なく「完全に貫通」してしまう状態。
ただし、まだ歯茎がその穴を覆っています。
4度(重度・露出)
3度と同じく骨が完全に貫通しており、さらに歯茎も下がって(退縮して)、お口の中に根の股の「穴」が目視できる状態。
食べカスが詰まりやすく、極めて感染を起こしやすい環境です。
根分岐部病変を引き起こす4つの主な原因
この病変が生じるルートは1つではありません。大きく分けて4つの異なる原因があり、それぞれで治療へのアプローチが全く異なります。
歯周病によるもの(外側からの感染)
最も頻度が高い原因です。
お口の中のプラーク(細菌の塊)が原因で歯周ポケットが深くなり、歯茎の境目から始まった歯周病が根の先へと進行し、やがて根の股にまで到達します。
根分岐部の天井(ドーム状の構造)は凹凸があり、非常に複雑な3次元の形をしています。ここにひとたび歯周病菌が入り込むと、患者さまご自身の歯ブラシの毛先はもちろん、歯科医院で行う通常の器具(スケーラー)さえ物理的に届かなくなります。
細菌にとって「絶対に手が届かない安全地帯」ができてしまうため、炎症が慢性化し、周囲の骨をどんどん溶かしていってしまいます。
根管治療の不備・根尖病変によるもの(内側からの感染)
歯の神経が死んでしまった後、あるいは過去の根の治療が不十分で、根の内部で細菌が繁殖した場合です。
根の底にあたる部分には「副根管」と呼ばれる微細な穴が開いていることが多く、歯の内側の細菌が骨へと漏れ出して分岐部に病巣を作ります。
外側の歯茎や歯周ポケットには何の異常もないのに、「歯の内側からの汚染」によって根の股の骨だけがくり抜かれるように溶けてしまうのが特徴です。
この場合、歯周病の治療をいくら行っても効果はなく、精密な根管治療によって内側の感染源をシャットアウトしなければ治りません。
パーフォレーション(不慮の穿孔)によるもの
過去の根管治療の際、複雑に曲がった根の管を細い器具で清掃する過程で、あるいは土台を入れるために歯を削る過程で、誤って歯の底や壁に「穴(穿孔)」を開けてしまった状態をパーフォレーションと呼びます。
歯の底に穴が開くと、本来は交わるはずのない「歯の内部」と「歯の外側の骨(歯根膜組織)」が直接繋がってしまいます。
そこから唾液中の細菌や、治療で使う強い薬剤が骨へと漏れ出すため、非常に強い炎症が起こり、またたく間に根分岐部の骨が溶けてしまいます。
肉眼では穴の位置や状態を正確に把握できないため、放置されると早期に抜歯へ追い込まれる極めて難易度の高い病態です。
歯根破折(ヒビ・割れ)によるもの
奥歯に過度な噛み合わせの負担(歯ぎしりや食いしばり)がかかり続けると、根の股の部分に応力が集中し、縦にパカッとヒビが入ったり割れたりします。
できた亀裂(ヒビ)には、毛細管現象によって目に見えないレベルの細菌が無数に吸い込まれていきます。
このヒビの内部に入り込んだ細菌は、どれだけ薬を塗っても、どれだけ洗浄しても、物理的に除去することが不可能です。
ヒビに沿って周囲の骨が急速に、縦深く溶けていくため、強い痛みや腫れを繰り返し、最終的には抜歯を選択せざるを得ないケースが多くなります。
原因を突き止める「科学的な診査」の重要性
このように、根分岐部病変は「外からの歯周病」「内からの根管感染」「偶発的な穴」「物理的なヒビ」という、全く異なる4つの背景から発生します。
見た目や一般的なレントゲンだけでは、このどれが真犯人であるかを見極めるのは困難です。
当院では、原因を「なんとなく」で判断せず、歯科用CTによる3次元画像分析と、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)によるお口の内側からの拡大観察を組み合わせることで、副根管の存在やパーフォレーションの有無、微細なヒビ(マイクロクラック)を科学的に特定します。
原因を正確に突き止めることこそが、奥歯の抜歯を回避し、天然歯の寿命を延ばすための最も大切なステップです。
原因別・進行度別の具体的な治療アプローチ
根分岐部病変を解決するには、「何が原因で起きているのか」を正確に突き止め、それに適した治療を選択する必要があります。
歯周病が原因の場合
初期(1度〜2度)の対応
歯周ポケットの奥深くにこびりついた歯石やプラークを、専用の器具(スケーラー)で丁寧に除去します。器具が届きにくい箇所には、超音波機器や細微な水流を用いるなどして清掃を行います。
重度(3度〜4度)の対応
ルートセパレーション(歯根分割構造)
2本の根っこを真ん中でパカッと2つに切り離し、それぞれ独立した「1本ずつの前歯のような形状」に作り替えます。
これにより、股ぐらの複雑な隙間がなくなり、ご自身でブラッシングができる環境に整えます。
ヘミセクション・トライセクション(歯根割去)
悪くなりすぎた片方の根っこだけを抜歯し、まだ健康な残りの根っこを土台として残して被せ物(ブリッジなど)を作る方法です。
根管治療(内側からの感染)が原因の場合
歯の内側の感染が原因であれば、徹底的な根管治療を行うことで、溶けてしまった分岐部の骨が劇的に回復することがあります。
当院では、肉眼では捉えきれない根の底の微細なヒビや副根管を特定するため、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を用いた精密根管治療を行います。
ラバーダム防湿で唾液の侵入を防ぎつつ、内部を徹底的に除菌し、密閉性の高い材料で封鎖します。
パーフォレーション(人工的な穴)が原因の場合
過去の治療で開いてしまった穴を放置すると、骨の破壊が止まりません。
マイクロスコープで穴の位置と大きさを正確に目視しながら、強アルカリ性で強い殺菌性と優れた高い封鎖性を持つ「MTAセメント(バイオセラミック素材)」を用いて、内側からその穴を精密に目封じ(リペア)します。
これにより、細菌の出入りを遮断し、周囲の骨の再生を促すことができます。
当院の分岐部パーフォレーション(穿孔)治療実績
根分岐部病変のなかでも、特に治療が困難とされるのが「パーフォレーション(歯の底の穴)」を伴う症例です。
他院で「歯の底に穴が開いて骨が溶けているため、抜歯するしかありません」と言われた患者さまであっても、当院の精密なアプローチによって歯を保存できたケースが多数ございます。
当院が取り組んだ実際の治療の流れや、MTAセメントを用いたリペア技術による骨の再生プロセスの詳細については、下記の症例紹介ページにて詳しく解説しています。同じようなお悩みをお持ちの方は、ぜひ参考になさってください。
症例:【分岐部パーフォレーション】左上痛い。他院では抜歯と言われた。
症例:【分岐部パーフォレーション】左下が腫れた。他院では抜歯と言われた。
諦める前に、原因に合わせた精密な選択を
「奥歯の根元が悪くなっている」「歯の底に穴がある」と言われると、もう抜くしかないのではないかと絶望的な気持ちになってしまうかもしれません。
しかし、根分岐部病変は、「なぜそこが悪くなっているのか」という原因の糸口を正しく解き明かせば、まだ残せる可能性が十分に眠っている病気です。
歯周病が原因なら環境を整える、根の中の細菌が原因なら精密に除菌する、穴があるならMTAセメントで塞ぐ。
それぞれの原因に合わせた科学的根拠に基づくアプローチを行うことが、天然の歯を1日でも長く持たせるための秘訣です。
東京都江戸川区小岩の笠原デンタルオフィスでは、日本顕微鏡歯科学会認定指導医の技術のもと、CTやマイクロスコープを用いた高度な診査・治療を行っています。
「奥歯を抜かなければならない」と診断された方も、諦める前に一度、当院にその大切な歯の状態を診せてください。
よくある質問 Q&A
監修医・医院情報
監修医:笠原明人(日本顕微鏡歯科学会指導医/笠原デンタルオフィス 副院長)
資格及び所属団体
PERF-J(中川寛一主宰)インストラクター
日本顕微鏡歯科学会認定医第66号 指導医第34号(江戸川区取得第一号)、代議員、理事
日本歯内療法学会会員
日本口腔顔面痛学会会員
日本口腔インプラント学会会員
歯科医師臨床研修指導医
日本歯科医師会会員・東京都歯科医師会会員・江戸川区歯科医師会会員
日本歯科保存学会会員
歯学博士
笠原デンタルオフィス・精密根管治療専門サイト:https://endodontics-tokyo.com/
〒133-0056 東京都江戸川区南小岩7-30-12 東名観光ビル 2F
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